痛みの治療
当院治療の考え方と施術の特徴について説明します。
痛みの発生
痛みの感覚は、体中に分布する痛みセンサーが刺激されることから始まります。痛みセンサーが刺激を受けると、その信号が神経回路を通して脳に伝達されます。そして脳が痛み信号だと認識して、センサーの部位に痛みを感じさせるのです。その意味で痛みは脳が発するものだとも言えます。
炎症物質が痛みの原因となる
痛みセンサーは、直接刺激の他に炎症物質に反応して痛み信号を発します。ケガをしたり細菌・ウイルスに感染すると急性炎症が起こり、生成した炎症物質が痛みセンサーを刺激して痛みが発生します。また急性炎症とは別に、日常継続して起きている慢性炎症があります。体内では常に免疫細胞が活動しているので、微小な炎症反応が継続しており、炎症物質が蓄積されると痛みが発生します。慢性炎症の重い例としては、リュウマチを始めとする自己免疫疾患があげられます。常時、強い炎症が継続しているため、痛みが収まることはありません。
筋肉や関節の痛み
生成した炎症物質は、主としてリンパ流に乗って排出・除去されます。日常活動の中で、特定の筋肉の負荷が長く続くと、筋肉の緊張が取れなくなり硬直状態となります。硬直した筋肉では血流・リンパ流が低下するため、筋疲労や慢性炎症で生成した炎症物質が排出されず、蓄積して痛みが発生します(炎症痛)。例えば野球肩、テニス肘、腱鞘炎などです。
或いはまた、運動の不足等でリンパ流が低下した状態が慢性化すると、リンパ液の滞留によってリンパ節が膨潤し、周囲の組織にリンパ液が浸み出して、”むくみ”を起こします。このむくみが周囲の筋肉に広がり炎症物質が蓄積されると、筋肉の慢性痛として現れ、時に深刻な痛みとなります(むくみ痛)。例えば、脇のリンパ節で起きれば持続性の重い肩痛・腕痛になり、鼠径部のリンパ節で起きれば大腿から膝の内側部にかけて重い痛みが続くようになります。
マッサージは炎症物質を除去して痛みを取る
マッサージは手技により筋肉の硬直を取り、血流・リンパ流を活性化して、患部から炎症物質を除去することにより痛みを取ります。
腰痛、肩痛、膝痛、首痛、腕痛、指痛などで、当院を訪れる患者さんのほとんどは、痛み部位に腫れやむくみがあり、炎症物質の貯留が認められますので、マッサージにより、貯留した炎症物質を排出させることで、痛みを取ることができます。
痛みを取るには皮下組織と筋膜組織が重要
当院のマッサージは、筋肉を緩めるときにまず体表面に近い領域(皮下組織と筋膜組織)をターゲットとして刺激することが特徴です。
この領域には毛細血管が集中しており、毛細血管の血流を著しく高め、同時にリンパ流を活性化することができます。血流がアップすると、ジーンとするような爽快感とともに体が温かくなるのを感じていただけます。
マッサージの鎮痛効果は即効的であり、筋膜組織の血流・リンパ流が回復し、そこから炎症物質が排出された段階で痛みが軽減していきます。筋肉痛をもたらす痛みセンサーは筋膜組織に集中しているからです。治療開始時には触れるだけで痛かったものが、マッサージの進行とともに痛みが薄らいでいくのを感じていただけます。
筋肉の硬直を解かないと痛みは再生する
しかし、こうして筋膜組織の硬直が取れ、痛みが薄れても、治療が終わるわけではありません。筋肉自身の硬直を取って炎症物質を十分に排出するには、さらに時間が必要です。筋肉の硬直が残ると、痛みが再生してくるので、できるだけ十分に硬直を解いておく必要があるのです。
さらに、硬直した筋肉の周辺には、その筋肉と連動して働く別の筋肉(関連筋という)の硬直がほぼ例外なく存在し、これも解いておく必要があります。関連筋の硬直を残すとそこから、治療したはずの筋肉に再硬直が誘導されるからです。
当院のこだわり
痛みが戻るのを防いで、十分な治療効果を得るために、当院ではかなり広範囲に渡っての、時間をかけたマッサージを行います。健康保険適用の時間範囲内では、十分な効果を出すことが難しいため、保険診療は行っておりません。
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2. 痛みとりの 鍼
鍼は神経系の痛みを得意とする
日常発生する痛みの中には、神経系に直接現れる痛みがあります。神経系の痛みは、マッサージで筋肉を緩めるだけでは解消できないことが多く、その場合に、鍼が重要な治療手段となります。
鍼を刺入すると、それに対する体の反射反応が起こり、筋肉が緩んだり血流がアップしたりと様々な効果をもたらしますが、なかでも特に、脳神経回路の痛み感受性を抑制する効果が顕著であり、以前から鍼鎮痛効果として知られています。
神経系の痛みには鎮痛剤も効果を出しにくい中で、鍼鎮痛は非常に有効である場合が多く、当院の鍼はこのような目的に絞った使用をしています。
脳神経が過敏となって引き起こされる痛みがある
最近になって知られてきたことですが、神経系の痛みの中には、一般の神経痛とは全く異なって、神経の障害を伴わない、脳神経の過敏さのみが引き起こす痛みがあります。ギックリ腰や圧迫骨折と言われる痛みの中には、この種のものが多く含まれていると思われます。
この脳神経の過敏さが引き起こす痛みは、通常の治療手段が効果を示さないなかで、まさに鍼鎮痛が有効であり、痛みを和らげ回復を早めることができます。
ギックリ腰 ―脳神経の過敏さが引き起こす痛み―
ギックリ腰は、ある時突然にやってきます。激烈な痛みが走るので、どうにも体を動かすことができなくなってしまいます。激烈な痛みですが、発症のきっかけは、靴下を履こうとしてかがんだ瞬間とか、階段を1段降りた瞬間といった、非常に些細な所作であって、強い衝撃を受けたわけではありません。
それでは何が起きているのでしょうか。
そもそも痛みというのは、体の異常を知らせる警告信号として備わったものと考えられます。痛みを発することにより、それ以上のダメージを回避する行動をとらせることを目的としています。
痛みセンサーは体中に分布し、常に刺激を受けているので、センサーからの信号はひっきりなしに脳に上がってきます。脳は上がってくる信号を選別し、警告の必要があるものだけを痛みとして発生させるのです。
さて、人間は立って歩き、立って作業をするので、腰への負荷は重く、生涯に渡って負荷が蓄積していくことになります。腰痛が出たり回復したりを繰り返すなかで、ある日、脳がもう限界だと感じると、突然に緊急の警告体制に入ります。
緊急警告の故に、脳内信号処理の基準をいっきに下げて、痛みセンサーからの僅かの信号もすべて痛みとして発するようになります。このため腰を少しでも動かそうとすると、激しい痛みが出て動くことができなくなります。
これがギックリ腰です。腰に負傷があるわけではないので、動かなければ痛みがないのが特徴です。つまり脳が過敏となって発した痛みと言うことができます。脳の信号処理の問題なので、鍼鎮痛作用が有効に働きます。
圧迫骨折 ―脳神経の過敏さが引き起こす痛み―
圧迫骨折とは、脊柱を形成するパーツである椎骨が縦方向の圧迫を受けて潰れた状態を言います。交通事故や転倒などで強い衝撃を受けて発生した場合を除き、通常は、加齢に伴って脆くなった骨が徐々に潰れていきます。
徐々に進行する圧迫骨折ですが、ある時、脳がもう限界だと感じ、緊急警告信号を発すると強烈な痛みが出るようになります。このようにして発生した圧迫骨折の痛みは、ギックリ腰の場合と同様に、脳が過敏となって引き起こすので、鍼治療が有効となります。
当院のこだわり
神経系の痛みが発生すると、多くの場合、痛みの強力さ故に、周辺の筋肉に強い収縮反応が起きています。(筋性防御といいます)
筋性防御の結果、周辺の広い範囲で筋肉の硬直による痛みが併発しており、本来の痛み箇所が特定できない程広がっているケースも見られます。
このため当院の鍼治療は、まずマッサージにより、広がった痛みを取り除くことから始めます。周辺筋肉の硬直を解き、炎症物質をできるだけ排出してから、鍼の刺入を行います。炎症物質を含む部位に鍼先が到達すると、ズーンとした重くて辛い感覚が生まれますので、マッサージによる炎症物質の除去は、鍼を楽にするためのものでもあります。
当院では鍼を単独で用いることはなく、必ずマッサージを併用して行います。
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*本ページに記載の内容は当院独自の見解を含むものです。